健康診断の聴力検査、「所見あり」ってどんな意味?健診で発見できない難聴とは?

お仕事をされている方は、毎年の健康診断で聴力検査を受けられていると思います。職場で一斉に行う職場検診だったり、病院での健康診断や人間ドックだったりしますね。この健康診断の聴力検査で「所見あり」といわれた場合、これは何を意味するのでしょうか?そして、どうすれば良いのでしょうか?
ここでは健康診断で行われる聴力検査の内容を紹介します。また、健康診断の聴力検査と、耳鼻咽喉科で行う聴力検査は、どう違うのかも説明します。

定期健康診断の聴力検査

仕事をしている人が毎年行う健康診断は「定期健康診断」と呼ばれ、聴力検査は必須項目です。この聴力検査は「選別聴力検査」とも呼ばれ、静かな環境でヘッドフォンを装着し、「オージオメーター」という機械から出るいろいろな音を聞きます。音が聞こえてきたらボタンを押したりして、測定しているスタッフにお知らせします。

一般的に選別聴力検査は、低い音(1000Hz)と高い音(4000Hz)の2種類の高さの音を、左右それぞれの耳で聞きます。基準となる小さい音(1000Hzなら30㏈以下、4000Hzなら40dB以下)が問題なく聞こえているかを調べます。

 Hz(ヘルツ)は「音の高さ」を表す単位で、数値が小さいほど、音が低く聞こえます。日常会話の音の高さは、だいたい250Hzから4,000Hzの間です。会話の中に含まれる音の高さである1000Hzと4000Hzの2つを検査することによって、会話の聞き取りに問題がないかを調べることができます。

 また、「音の大きさ」はdB(デシベル)で表します。30dBは大体「ささやき声」や「秒針の針が動く音」程度で、40dB は「静かな住宅地」や「図書館」程度の音とされています。

4000Hzの高い音が聞こえない場合は、高音の聴力障害の可能性があり、1000Hzの低い音が聞こえない場合は、低音の聴力障害の可能性があります。このような状態が、健康診断では「所見あり」と判断されます。

音の周波数と聴力の関係はこちら

健康診断で「所見あり」と判断された場合

健康診断で「所見あり」と判断された場合、「一度耳鼻咽喉科で再検査を受けてください」と推奨されます。検査結果は当日の体調に影響される可能性もあるため、再検査によって正確な結果を確認することが大切です。

 またその時点で精密検査を受けることで、もし難聴があるなら、その程度やどの部位が原因なのか、また必要な対応は何か早期に指導を受けることができます。

では、再検査で受ける「精密検査」の「精密」とはどういう意味でしょうか?耳鼻咽喉科で行う精密検査は、健康診断の聴力検査と検査する項目が異なります。

職場健診と耳鼻咽喉科の聴力検査の違い

 健康診断で行われるのは「選別聴力検査」です。耳鼻咽喉科の先生によると、選別聴力検査はもともと、「常に騒音にさらされている職場での聴覚管理」を第一の目的としているそうです。そのため、騒音性難聴の初期で聞こえにくくなるといわれる4000Hzの音が、検査項目として設定されているそうです。また短時間で終わることが特徴で、具体的な聴力レベルは出てきません。

 この検査はもちろん大切なのですが、万能ではありません。
加齢に伴って起こる加齢性難聴は、8000Hzの高音域から、低音域に向かってだんだん聞こえにくくなります。

例えばある人は、6000Hzまでの高音域はもう聞こえにくくなっているのに、健康診断の4000Hzはまだ聞こえる、だからまだ「異常なし」判定になる、という事が起こります。

 耳鼻咽喉科では、もっと精密な検査が行われます。最も一般的に行われるのは「標準純音聴力検査」です。健康診断と同じようにヘッドフォンを装着して音を聞くのですが、聞く音の「高さ(周波数)」がより広く、詳細になります。125~8000Hzの周波数で、7〜11種類の高さの異なる音の聞こえを調べます。

この検査には、ヘッドフォンから音を聞く気導聴力検査と、耳後部から音を伝える装置で音を聞く骨導聴力検査があります。

 検査の結果は「オージオグラム」という図に記載されます。どの高さの音が、どれぐらいの小ささの音で聞こえているのかがわかります。オージオグラムの詳細については、下記ブログを合わせてご確認ください。

オージオグラムの読み方はこちら

 

健康診断では簡易の検査が実施されていますので、まずはこの検査をしっかり受けましょう。そして「所見あり」となったら、すぐに耳鼻咽喉科でもっと細かい検査を受けてください。

健康診断の聴力検査で正常と言われても、「少し聞きづらくなったな」、「聞き逃しや聞き間違いが増えたな」と思っているなら、やはり耳鼻咽喉科でより正確で詳細な検査を受けることをおすすめします。

また、お仕事での健康診断を受ける機会がない方も、定期的に耳鼻咽喉科で聴力検査を受けることをおすすめします。もちろん、聴力検査以外のチェックをするためにも、健康診断を定期的に受けることは大切ですね!

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