補聴器をより安く手に入れるには?3つの助成制度をわかりやすく解説
加齢等で聞こえが悪くなり、日常生活に支障が出る場合、聴力を補うのに「補聴器」が役に立つ場合があります。 しかし、医療機器である補聴器の購入は決して安い買い物ではありません。
経済的な負担を減らしたいなら、国や自治体が提供している助成制度を活用するのも手です。ここでは、補聴器を購入する際にで利用できる3つの助成制度を紹介します。
1.1 【高度難聴・重度難聴向け】障害者総合支援法
高度難聴あるいは重度難聴の聴覚障害者で、身体障害者手帳を持っていれば、「原則として1割の自己負担」で、「障害者総合支援法対応の補聴器を受給」できます。これは、「障害者総合支援法」が定めるものです。
補助金を受けるには、本人が販売店から補聴器を購入して、費用を市区町村に請求します。
●障害者総合支援法とは
障害者総合支援法は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律です。聴力障害による補聴器購入も支援対象の一つです。具体的には、法律の中で「補装具費支給制度」があり、聴力障害の状況から必要になる補聴器の購入、借受け、修理に関する費用は給付の範囲内となっています。
●利用可能な方
この制度を利用するためには、「聴覚障害等級」のいずれかの等級に該当することが条件となります。下記の図に示されている通り、高度難聴と重度難聴が対象になります。中等度や軽度の難聴者は対象にならないことが多く、支給を受けることが出来ませんのでご注意ください。
●購入できる補聴器
障害者総合支援法対応補聴器は、各メーカーから販売されています。シグニア補聴器が販売している障害者総合支援法対応補聴器は下記の通りです。
【シグニアの障害者総合支援法対応補聴器カタログはこちら】
●助成してもらえる金額
補聴器のタイプにより、法律上標準価格が決められており、「補聴器購入基準価格」と呼ばれています。原則として、基準価格の1割を購入者が負担し、残りは公的負担になります。ただし、所得により全額を公的助成にできる場合があったり、逆に所得が多いと負担額が増えたりすることもあります。詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。
また、もっと性能の良い、基準価格を上回る価格の補聴器を希望する場合には、差額を自己負担で購入することを認めている自治体もありますので、市区町村の担当窓口で相談してください。
1.2 障害者総合支援法利用の流れ
●身体障害者手帳取得の流れ
障害者総合支援法による補聴器購入費用の支給を受けるには、まず身体障害者手帳を所持する必要があります。具体的には下記の図を参照してください。
●補聴器購入と費用給付申請の流れ
身体障害者手帳を受け取ったら、補聴器購入費用の支給申請ができます。気を付けたいのは、補聴器購入後の申請は認められていない点です。必ず「事前申請」を行ってください。
2.1 【中等度難聴・軽度難聴向け】医療費控除
重度難聴、高度難聴ではない場合、助成は受けられないのでしょうか?実は「補聴器相談医」を受診して、補聴器が必要と判断された場合は、補聴器購入時に一定の医療費控除を受けることができます。
●医療費控除とは
「医療費控除」は一定額以上の医療費を支払った場合に限り、支払った税金の一部が戻ってくる制度です。
基本的に1年間にかかった医療費の合計が10万円以上(所得が200万以下の場合、総所得金額の5%)であることが条件で、家族全体の医療費合計がこの金額を上回っていれば、税金が一部戻ってきます。
補聴器の購入費用も医療費控除の対象です。シグニアの高機能補聴器は10万円を超えることが多いため、多くの場合この制度を利用することが可能です。
●利用可能な方
①「補聴器相談医」の資格を有する耳鼻咽喉科の医者によって、補聴器が診療や治療に直接必要であると判断した場合のみ対象となります。
すべての補聴器購入が医療費控除の対象となるわけでありませんし、「補聴器相談医」の診察を受けずに自分の判断で購入した場合、医療費控除の対象となりませんのでご注意ください。
②所得税や住民税を納税している方が対象です。
そもそも医療費控除とは「所得税や住民税の控除が受けられる制度」ですので、所得税や住民税が非課税の人は、控除対象の税金がないため、医療費控除は受けられません。
●購入できる補聴器
医療費控除の対象は、「医療機器」として厚生労働省に認定されている「補聴器」です。 オンラインや家電量販店などで販売されている集音器や助聴器などは、「家電」に分類されるため、医療費控除の対象にはなりません。
●還付してもらえる金額
医療費控除の返金額の計算は、加入している保険や所得も関わります。イメージしやすいように簡単に説明すると、下記の計算になります(実際はもっと複雑です)。
(実際に支払った医療費の合計額ー10万円)×所得税率=実際に戻ってくるお金
つまり、購入した補聴器費用の全額が返ってくるわけではなく、適用される所得税の税率によって、還付される金額が異なります。詳細な情報は、お住まいの税務署に問い合わせて確認すると良いでしょう。
2.2 医療費控除利用の流れ
①補聴器相談医を受診する
「補聴器相談医」の資格を有する耳鼻咽喉科医療機関を受診し、「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を作成してもらいます。
②補聴器相談医からの書類を持もって「認定補聴器専門店」に行く
「認定補聴器専門店」には「認定補聴器技能者」が在籍しています。認定補聴器専門店で認定補聴器技能者から補聴器を購入してください。それ以外の場所や人から補聴器を購入した場合には、医療費控除を受けることができません。診療情報提供書の控えと、補聴器の領収書を補聴器販売店から受け取ります。
③確定申告時に医療費控除を申請する
申請からおよそ1か月~2か月で、指定の口座に還付金が入ります。
【日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定の補聴器相談医のリストはこちら】
3.1 【中等度難聴・軽度難聴向け】自治体の助成制度
身体障害者手帳の対象とならない軽中等度難聴者でしたら、お住まいの自治体による独自の助成制度が利用できるかもしれません。
最近、高齢化が進むにつれて、補聴器購入費用を助成する自治体が増えてきています。日本補聴器販売店協会によると、18歳以上を対象とした補聴器購入費助成制度を実施している自治体は2023年12月の時点で237(全国市区町村数1,747)と、年々増加しています。最近の実施状況は下記日本補聴器販売店協会の資料から確認できます。
自治体独自の助成制度は、その自治体の居住者が対象であり、所得制限がある場合もあります。また、昨年度は助成があったのに今年度はないという場合、当年の助成金の枠を使い切ったので打ち切る場合など、様々なパターンがあります。
自治体によって条件がまちまちですので、詳細はお住まいの自治体の担当窓口に確認してください。自治体のウェブサイトを見てみるのも良いでしょう。
【日本補聴器販売店協会「全国の自治体補聴器購入費助成制度の実施状況】
まとめ
紹介した通り、難聴の方が補聴器を購入する際に、下記3つの助成制度を利用できるかもしれません。
●障害者総合支援法に基づく補聴器購入の助成制度
●医療費控除
●自治体独自の助成制度
これらの制度は、難聴の度合・所得・医療機関受診・購入場所などについて様々な条件がありますので、ぜひしっかり情報収集した上でご活用ください。
難聴を自覚しているなら、制度を利用するためにも自身の聴力を正しく把握することが大切です。まずは耳鼻咽喉科を受診して、聴力検査を受けてみませんか。