花粉症と難聴の関係
この季節、スギ・ヒノキ花粉による季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)を発症する方も少なくありません。花粉症では鼻水・鼻づまり・目の炎症が現れるのことが多いですが、たまに「耳が痛い」、「耳鳴がする」、「聞こえづらい」と訴える方もいます。花粉症で難聴になることもあるの?花粉症と難聴の関係について説明します。
花粉症の患者数
日本において花粉症を有する人の数ははっきり分かっていませんが、環境省の資料によると、2019年全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの調査が行われ、花粉症の有病率はなんと42.5%でした。
同じような調査は1998年と2008年にも行われました。ぼぼ10年ごとに3回実施されています。
驚くべきことに、花粉症の有病率は10年ごとに10%ずつ増えているのです!花粉症は国民病といわれても過言ではありませんね。
花粉症は、原因となる花粉の飛散が少なくなると症状が治まってくることが多いのですが、症状の程度は個人差があり、ひどい場合は呼吸がしづらくなり、集中力の低下やよく眠れないなど、日常生活に大きな影響を及ぼす場合もあります。
中には耳のトラブルが起こり、一時的に難聴が起こる方もいます。
花粉症と難聴
「花粉症で鼻炎や目の症状が出ることは知っているけど、耳とどう関係しているの?」と疑問に思われる方もいるでしょう。実は、鼻と耳は体の中でつながっていて、鼻炎が悪化すると、それが難聴の原因となることがあるのです。
まず耳の構造を見てみましょう。耳の奥には中耳という空洞があります。入り口には「鼓膜」という薄い膜があり、音の振動をさらに耳の奥に伝える役割があります。中耳は耳管と呼ばれる管で鼻とつながっています。
耳管は普段は閉じていますが、つばを飲み込んだり、あくびをした時に一時的に開き、空気が通ります。それで中耳内外の気圧を調整する役割を果たしています。
例えば、飛行機に乗った際、気圧変化で耳の不快感を感じた時に、水を飲む等で症状が緩和されるのも、耳管が開き、耳の外と中耳の気圧調整ができたからです。
花粉症で難聴になる理由
耳鼻咽喉科の先生によると、花粉症がひどくなると耳にまで悪い影響を及ぼすことがあるそうです。具体的には:
●気圧調整機能の低下による影響
アレルギー性鼻炎が悪化して耳管の入り口にまで及ぶと、耳管が正常に開かず、中耳の気圧調整がうまくできなくなります。すると、音を伝える鼓膜の振動にまで影響が及び、音が聞こえにくくなる場合があります。
●むくみの影響
アレルギー性鼻炎になると、鼻の粘膜がむくみが生じて鼻づまりを起こします。このむくみは鼻だけでなく、内耳に現れることもあります。内耳にある蝸牛という器官には内リンパ液が入っていますが、何らかの原因で過剰にたまると、内耳がむくんでしまいます。そうするとうまく音を感じ取れなくなり、難聴の症状が現れる場合があります。
そのほかに、鼻水の中の細菌等が耳管を通して中耳に入り込んで、急性中耳炎や滲出性中耳炎を起こす場合があります。大人よりも耳管が短い子どもが中耳炎になりやすいので、花粉症のシーズンは特に注意が必要だと耳鼻咽喉科の先生は呼びかけています。
花粉症シーズン、耳の不調に気を付けよう
花粉症が原因で起こる可能性がある耳の症状は、下記のとおりです。
- 一時的な聴覚障害
- 耳が詰まった感じまたは腫れ感
- 耳垢の増加
- 耳のかゆみや痛み
- くしゃみによる内耳の痛み
- 耳鳴り
- めまい
花粉症によるこれらの症状は、花粉症が治まると自然に解消される場合もあります。
しかし難聴の方は、日ごろの症状に花粉症による耳の不調が加わると、さらに日常生活に影響が出ますね。補聴器を着用している場合、花粉症による症状が補聴器の効果を妨げる可能性があります。
少しでも耳の異常を感じたら、我慢せずに早めに受診して対処することをお勧めします。
また、季節の変わり目ですから寒暖差にも注意が必要です。寒暖差が大きいと、風邪などの病気になりやすいといわれています。
さらに、花粉症でも風邪でもないのに鼻がムズムズする方もいるようですが、寒暖差によってくしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が現れる「寒暖差アレルギー」(血管運動性鼻炎)もあるそうです。
花粉症と同じように、耳にまで影響が出ることがありますので、症状が数日以上続く場合は、耳鼻咽喉科にご相談ください。
耳と鼻はつながっており、互いに深い関係にあります。耳で起こる症状は鼻に原因がある場合もあります。耳の健康のためにも、鼻の症状が悪化しないよう、心がけましょう。
花粉症は過剰な免疫反応によるアレルギーですので、花粉の暴露を防ぐ、体調を整える等の方法で症状を緩和できるといわれています。ぜひその方法も調べておきましょう。