なぜNHKのニュースの方が聞きやすいのか
テレビを見ていて、ボリュームは十分大きいはずなのに、何を言っているのか聞き取れない、という経験はありませんか?また、同じテレビで見ているのに、番組によって聞き取りやすさが違うと感じることもありますよね。なぜでしょうか。
話す速さと聞き取りやすさの関係
同じニュース番組でも、「NHKのニュース番組は聞き取りやすいけど、民放のニュース番組はよく聞き取れない」と難聴の方がよく言われます。NHKニュースの聞き取りやすさのポイントは、アナウンサーの話すスピードです。NHKのアナウンサーは1分間に300文字~350文字を読むそうです※1。それに対して、民放では1分間に500文字以上のスピードで話しているアナウンサーもいるとのことです※2。つまり、より早口だということですね。日常生活でも、早口の人の言葉は聞き取りにくいと感じる難聴の方も多いのではないでしょうか。
※1 矢野 香 2014年7月 『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る法―NHK式7つのルール』 ダイヤモンド社
※2 脇山 真治 2015年2月 『プレゼンテーションの教科書』 日経デザイン
加齢とともに音声情報処理の速度がおちる
なぜ難聴になると、早口が聞き取りにくくなるのでしょうか。音は耳で集められ、複雑な経路をたどって脳に送られ、脳が言葉として判断します。難聴になると、耳で集めた音を脳に伝える段階で、音の情報が欠落しやすくなります。送られてくる情報が少ないので、脳は理解するのに時間がかかってしまいます。
また、脳の機能の低下も一因になっている場合があります。加齢とともに脳内の神経細胞や聴覚野の老化が進み、届いた音の信号を処理する速度が低下することは医学的に証明されています。
このように、送られてくる情報が少なくなり、それを処理するスピードも遅くなることで、早口でしゃべられると脳がすべての情報を処理しきれず、聞いても理解できないということが発生します。
補聴器を着けていても会話が聞き取りづらいと感じる場合は、もう少しゆっくり話してもらうだけで改善するかもしれません。また、話す人の口元を見るのも、聞き取りを向上させる助けになります。補聴器で音量は十分なはずですから、正面から、ゆっくり、はっきり話してもらえるよう、頼んでみてはいかがでしょうか。