難聴と様々な病気の関連性

難聴になると認知症のリスクが高くなる―。そんなショッキングな報告が厚生労働省から発表されました。米国における近年の研究報告では、難聴が高齢者に多く見られる健康状態と深い関係にあると報告されています。

難聴になると認知症のリスクが高くなる

そんなショッキングな報告が厚生労働省から発表されました。
超高齢社会ニッポンに迫る身近な問題「認知症と難聴」のこと、家族と一緒に考えてみませんか。

【認知症】

聴力の低下は、会話を理解するために聞き取りにかなり集中しなければならず、脳に余分な負担をかけることになります。※8
これが、難聴が認知症やアルツハイマーにつながるという理論です。
また、難聴の程度が重くなればなるほど、認知障害の発生率も高くなり、精神機能の低下も急激になると研究は示唆しています。

※8

脳は常に聴覚からの刺激を受け、日々音を聞くトレーニングをしています。この刺激がなくなると、聞く力が低下するだけでなく、次第にコミュニケーション能力も衰退していきます。そのため、補聴器の装用が遅れれば遅れるほど、聞こえに慣れることが難しくなってしまいます。

補聴器を装用すれば、最終的にはQuality of Life(生活の質)を高めることができます。
また、補聴器の技術は急速に進化しており、10年前の機器よりはるかに高性能になっています。

認知症と難聴の詳細はこちら  

米国における近年の研究報告でも、難聴と様々な病気の関係性が報告されています。

多くの人が難聴は加齢によって避けられないものだと考えていますが、難聴は、積極的に対処しなくてもよい良性のものだととらえるべきではありません。難聴を抱えた方の年齢に関わらず、難聴の診断と対策は、健康の維持および回復にとって非常に重要であり、場合によってはさらに重篤な症状を防ぐ可能性があるのです。

積極的な対策がとられていない難聴が、さらに広範にわたる深刻な影響を及ぼす可能性があるということが、米国の最新の研究で指摘されています。
認知症以外にも、高齢者に多く見られる一部の健康状態が、難聴と非常に深い関係があるという米国の研究の一端をご紹介します。

 

【転倒のリスク】

聞こえにくい人は、自分の全体的な環境をうまく認識できないため、つまずいたり転倒したりする可能性が高まります。

※5

軽度の難聴を抱える人は、難聴のない人と比べ転倒した経験が3倍近くありました。

※6

65歳以上の3人に1人が毎年転倒しており、転倒によって多くのケガを負っています

 

【脳心血管障害】

心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管障害は、血流が不十分になり、内耳に血管障害を起こします。したがって低音障害型難聴は、心血管系疾患の早期警告サインである場合があります。

※3

また、特に高齢者では、心血管系疾患を発症すると聞こえに悪影響が及び、逆に心血管系疾患が改善されると聞こえが改善するという研究があります。

 

【がん治療】

一部の抗がん剤や放射線治療には聴覚的な毒性を発生する場合があります。
この毒性とは、薬剤や化学物質による内耳の損傷のことで、難聴のほか、耳鳴りや平衡感覚への障害をきたす場合があります。プラチナベースの抗がん剤、特にシスプラチンとカルボプラチンは、聴覚的毒性の主な「容疑者」であると考えられています。

 

【糖尿病】

糖尿病患者はそうでない人と比べて難聴になるリスクが約2倍に上がるという報告があります。

※1

糖尿病と判明した当初は聴力が正常でも、糖尿病に関連する病変により、内耳の神経や血管が損なわれ、次第に難聴に悩まされることになると考えられます。

 

このように難聴と深い関係にある病気は様々です。

聞こえに不安を感じたら、できるだけ早く対処することをお進めしています。

 

※1 Fox News.com. Diabetes may be linked to hearing loss, study finds. 2012 (http://www.foxnews.com/health/2012/12/03/diabetes-may-be-linked-to-hearing-loss-study-finds/)
※2 Hendricks, J. et al (2006). Progressive sensorineural hearing impairment in maternally inherited diabetes mellitus and deafness (MIDD). Otology Neurotology.27 , 6, 802-808.
※3 David R. Friedland, MD, Ph.D. http://www.enttoday.org/details/article/496955/Low-Frequency_Hearing_Loss_May_Indicate_Cardiovascular_Disease.html
※4 American Journal of Audiology. The Influence of Cardiovascular Health on Peripheral and Central Auditory Function in Adults: A Research Review. Raymond Hall, Stacey Kerschen. 2010 (http://aja.pubs.asha.org/article.aspx?articleid=1757459)
※5 JAMA Internal Medicine. Hearing Loss and Falls Among Older Adults in the United States. Frank R. Lin, MD, PhD; Luigi Ferrucci, MD, PhD. 2012 (http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1108740)
※6 USNews.com. Hearing Loss Triples Risk of Falling: Study. 2012 (http://health.usnews.com/health-news/news/articles/2012/02/27/hearing-loss-triples-risk-of-falling-study)
※7 Centers for Disease Control & Prevention. Home and Recreational Safety. Falls Among Older Adults: An Overview. 2013 (http://www.cdc.gov/ homeandrecreationalsafety/falls/adultfalls.html)  
※8 University of Pennsylvania – Perelman School of Medicine, Jonathan Peele, PhD. 2011 (www.sciencedaily.com/ releases/2011/08/110831115946.htm)
※9 American Tinnitus Association. Ototoxic Brochure by League for Hard of Hearing. 2012.

 

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