
私たちの世界は、音にあふれています。笑い声、忘れられないメロディ、岸に打ち寄せる波音…。すべての音が音楽のように耳に届き、私たちの生活を豊かに彩りつづけてくれます。しかし、ある日突然、笛の音が1日中鳴り響くように耳鳴りが始まったら、どうなるでしょうか。
耳鳴りとは、周囲の音とは別に耳の中で聞こえる雑音・異音のことをいいます。片方の耳で鳴っていると感じる場合もあれば、両方の耳で感じる場合もあります。
病院で「あなたの耳鳴りは治らない」と診断され、苦しさを理解してもらえないことに心を痛めている方もいるかもしれません。
今のところ、耳鳴りを確実に消失させる薬や治療法がないのが実情ですが、耳鳴りを緩和する方法はあります。当ページには、耳鳴りに関する様々な情報を掲載しています。耳鳴りを前向きにコントロールしていただくためにお役立てください。
(1) Kochkin, S., Tyler, R. and Born, J. MarketTrak VIII: Prevalence of Tinnitus and Efficacy of Treatment, The Hearing Review, Vol. 18(12), November 2011, pp. 10-26
(2) Langguth B, Kleinjung T, Fischer G, Hajak P, Eichhammer P, Sand PG Tinnitus severity, depression and the big five personality traits. Prog Brain Res. 2007; 166:221-7.
(3) Barnea G,Attias J, Gold S, Shahar A. Tinnitus with normal hearing sensitivity: extended high-frequency audiometry and auditory-nerve brain-stem-evoked responses. Audiology 1990; 29;36-45.
(4) Crummer RW; Hassan GA. Jan, 2004.
(5) Tyler, R. Tinnitus Handbook, 2000.
耳鳴りは、聴覚伝達系の問題の現れであり、実にさまざまな病気のパターンに関連付けることができます。耳鳴りに悩む人のほとんどが、聞こえにくさも感じています。
耳鳴りの主な原因の一つが聴力の低下です。(6)
例えば、爆発音や、大音量の音楽を聞いた場合などに突発的に起こることがあります。
また、加齢による聴力低下により突然耳鳴りが起こることもよくあります。ただし、耳鳴りが難聴のきっかけになるわけではありません。
聴覚系のダメージのほか、顎関節の機能障害(歯ぎしりなど)や慢性的な首の筋肉の緊張によっても耳鳴りが起こる可能性があります。
耳鳴りの原因としてストレスが挙げられることもありますが、今のところ、その関連性を示す科学的根拠はありません。しかし、耳鳴りはストレスの原因となり得ます。また、ストレスを感じるほど耳鳴りの不快音の感じ方が激しくなることもあります。
薬の服用が耳鳴りを誘発する場合もあります。通常は、服用を止めると耳鳴りも消えますが、薬の服用により大きなダメージを受けたことが、慢性耳鳴りの原因となる可能性もあります。
耳鳴りは、人により感じ方が異なるため、正確な診断が非常に重要です。まず、原因を調べ、医学的に治療できるかどうかを判断します。その診断にあたっては、耳鼻咽喉科の専門医による様々な検査を行う場合があります。耳鳴りの高さや音量は、特殊な診断テストで判定することができます。また、聴力検査で難聴併発の有無を明らかにします。(7)
(6) ˜Characteristics of Tinnitus and Etiology of Associated Hearing Loss: A Study of 123 Patients, International Tinnitus Journal, 2002.
(7) ˜Jane L. Weissman, MD Barry E. Hirsch, MD: Imaging of Tinnitus. A Review From the Department of Radiology and Otolaryngology, Oregon Health Sciences University, 3181 SW Sam Jackson Park Rd, Mail Code CR-135, Portland, OR 97201-3098 (J.L.W.), and the Department of Otolaryngology, University of Pittsburgh Medical Center, Pa (B.E.H.). 2000
耳鳴りは不快感を伴います。また、自分の意思に反して耳鳴りを意識してしまう傾向があります。最初は、「休めば治る」と考え、家で安静にするかもしれません。しかし、このように引きこもると、周囲との関わりや、聴覚的な刺激、気晴らしの機会なども減少し、かえって耳鳴りに意識が集中しやすくなってしまいます。その結果、耳鳴りに対して何もできないという無力感が高まり、もっと悪化するのではないかという恐怖感も加わり、さらに耳鳴りが気になるという悪循環に陥ります。耳鳴りから気を逸らすことで、この悪循環を断ち切ることが重要です。
最新のデジタル技術が耳鳴り治療に役立つ場合があります。主な原理は外部から音刺激を与えることにより外部の音に注意を向けさせ、「耳鳴りを気にならなくさせる」方法です。この音響療法は慢性化した耳鳴りに対して有効な治療方法の1つではありますが、経験が豊富な専門医のカウンセリングや指導が不可欠です。耳鳴り治療器はただ装用すれば症状が改善するものではなく、間違った使い方をすると、耳鳴りを逆に悪化させてしまいかねません。
シグニア補聴器の多くの製品は耳鳴り治療器機能(TRT)を搭載しています。
TRT(耳鳴り再訓練法)用の治療音(音響的ノイズ)により、耳鳴りの悩みに応えます。
受診の際には
などについて細かく説明・指導を受けてください。音響療法の装置や音の大きさ、使用方法に至まで具体的な指導を受けるようにし、不安なこと、心配なことは何でも質問するようにしましょう。
耳鳴りに決して負けないという強い気持ちを持ってください。前向きな姿勢が耳鳴りの克服に大きく作用します。リラックスしたり、スポーツや趣味は、耳鳴りに打ち勝つ支えになることでしょう。ここでは耳鼻咽喉科の医師、心理学者および音響の専門家と共同で作成した、実践的なヒントをまとめました。耳鳴りでお悩みの方は、先ずは早めに耳鳴り治療に詳しい耳鼻科専門医を受診されることをお勧めします。