難聴の兆候を見逃さないで!家族ができることは

親や家族が難聴になると、聞こえるように大きな声で話すようにしていたり、大きなテレビの音を我慢していたり…家族としてちょっと不便だけど何とかなる、と思う人が多いのではないでしょうか。
実は難聴を放置すると、家族とのコミュニケーションだけではなく、人間関係と社会参加もに影響を与え、さらに精神的健康や脳の認知機能に害を及ぼす可能性さえあります。

体型や視力の変化とは違って、加齢による難聴は自覚しにくく、自分の生活が大きく影響されるようになるまで本人がその兆候に気づかないことがあります。また、本人が難聴を受け入れたくない気持ちが働いて、聞こえづらさがあっても聞こえる振りをしたりする場合があります。家族として、どのようにいち早くその兆候を発見できるのか、どうサポートすればいいのか、ヒントを説明します。

難聴は思っている以上に生活に影響する

難聴がもたらす影響のうち一番大きいのは、何と言っても、周囲とのコミュニケーションでしょう。難聴が進行するとともに、本来問題なく進行するはずの会話がうまくいかなくなります。何度も聞き返したり、聞き間違えたりして、コミュニケーションがギクシャクしがちです。本人がイライラするだけでなく、周囲も多大なストレスを抱えることになります。結果的に会話量が減ったり、そもそも会う機会が減ってしまったりします。

さらに近年、認知症と難聴の関係もしばしば指摘されるようになりました。中高年で耳が聞こえにくくなることで、認知症の発症リスクが高まるおそれがあるいわれています。2020年、世界的医学誌LANCETでは、認知症のリスク要因の中には予防可能なものがあり、その中で一番大きなものが、「難聴を放置すること」であると報告されました。

 

認知症と難聴について詳しくはこちら


また、あまり知られていませんが、難聴になると自分の周囲の環境を認識しにくくなり、日常の様々なシーンで危険性が高まることで、転倒しやすくなるという事実もあります。高齢者の「不慮の事故」のうち、「転倒・転落」によるものは毎年多く発生しています。
厚生労働省「国民生活基礎調査」(令和元年)によると、高齢者の介護が必要となった原因は、多い順に「認知症」、「脳血管疾患(脳卒中)」、「高齢による衰弱」で、その次の4番目の理由として「骨折・転倒」(13.0%)が来ます。
難聴を対処することで、認知症や転倒のリスクを下げられるかもしれないのでしたら、早めに対策を促したいものですね。これも、家族に対する思いやりになるでしょう。

難聴と危険な転倒についてはこちら

 難聴への誤解

  しかし現実では、「日本補聴器工業会」が2022年1万4000人を対象に実施した調査で、耳が聞こえにくいことを自覚していても60%余りの人は医療機関を受診していないことが分かりました。難聴にすぐに対処しない原因として、いくつかの難聴に対する誤解に由来するのではないかといわれています。

誤解その一:「難聴とは、すべての音が聞こえにくいこと。私はいろいろ聞こえているから大丈夫」

それはまったく事実ではありません。難聴は近視のような症状とは異なり、一律に「大きな音は聞こえて小さな音は聞こえなくなる」というものではありません。難聴にはさまざまな原因がありますし、いくつかの種類の難聴があります。ひどく聞き取りにくくなったり、完全に耳が聞こえなくなったりする難聴の方は、実はごく一部です。
多くの方は、ある特定の環境(騒がしい場所等)で聞こえにくい、あるいは特定の音(女性の声や、子音、鳥のさえずり等)が聞こえにくくなります。このような症状の方は、静かな環境でのはっきりした会話は問題なく聞き取れたりしますので、「自分の聞こえは問題ない、まだ聞こえるから大丈夫」と考えてしまうこともあるでしょう。 

日本補聴器工業会最新調査Japan Trak 2022はこちら

 誤解その二:「難聴は治らないから対処しても無駄」

 確かに、加齢による難聴は、音を聞き分けるための細胞(有毛細胞)が何らかの原因で損傷し、手術や薬で完全に治すことが困難です。そのため、「歳だからしようがない、我慢するしかない」と思う人も少なくありません。しかし、難聴になってもいろいろな手段があります。例えば補助器具で聴力を補い、いろいろな症状を緩和することができます。

その選択肢の1つが補聴器です。軽度の難聴であっても、早期に最適な補聴器を装用し始めれば、より早く聞こえに慣れることができます。

難聴の兆候

様々な弊害をもたらす難聴ですが、パートナーや子供は家族として、どうすればその兆候をいち早く発見できるのでしょうか。また、どの程度聞こえにくくなったら受診すべきなのでしょうか。

難聴の原因や種類は異なっても、難聴の兆候は似ています。日常生活の中で気づくことができる、一般的な兆候について紹介します。

●何度も聞き返したり、理解できるまで何度も説明を求めたりすることがある
●テレビや音楽などの音量が大きい
●「7時」を「1時」と聞き間違えるように、特定の単語を聞き間違えることがある
●女性や子供など、特定の人の声が聞き取りにくい
●体温計や家電製品の電子音、電話の呼び出し音など高い音を聞き逃す

 また、普段聞こえにくさが顕著ではなくても、騒がしい環境で聞き取りにくく感じたり、疲労感を覚えることがあります。

 ●複数人の会話が聞き取りにくい
●パーティー、集会、騒がしいレストランを避けてしまう
●多人数の集まりなどに参加した後に、疲れを感じる
●騒音や人の声にイライラしたり、ストレスを感じたり、圧倒されたりする

 これらの症状がある場合、聴力が低下している可能性があります。できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診して、聴力検査を受けることをおすすめします。もし補聴器が役に立つと判断されたら、こちらも早めに補聴器のお店に行ってください。補聴器の効果を確認するためにも、本人だけでなく家族も一緒に行って補聴器を検討するのが良いでしょう。

難聴対策への心理的なハードルが高く、受診したくない人もいます。その時「どうして受診したくないのか」、本人の気持ちに寄り添い、一緒に解決の糸口を探る事が、難聴対策の第一歩です。

難聴がある家族を聞き取りやすくには

難聴の家族がいる時は、話し手の少しの気遣いで、より会話がスムーズになります。

●聞こえやすい環境を整える
雑音が多いと聞こえにくいため、テレビを消すなどして、できるだけ静かな環境を整えます。また、表情や口の形がよく見えるよう、明るい場所を選びましょう。

●向かい合って話す
難聴の場合、どの方向から声が聞こえてくるのか分かりにくいこともあります。相手の正面に立ち、お互いの顔を見ながら話すようにしましょう。
補聴器をつけている場合、耳元で大きな声で話すと、音が割れて逆に聞きづらい場合があります。普通の距離感で話しましょう。片耳だけに補聴器をつけている方の場合は、どちらかというと補聴器をつけている側から話しかけましょう。

●ゆっくり・はっきりと話す
難聴の場合、小さい声や早口の言葉などが聞こえにくくなります。口をしっかり動かして、はっきりと言葉を話すようにしましょう。また、少しゆっくり目に話すのも良い結果をもたらします。ポイントは一音一音を区切りすぎず、「言葉のまとまり」で区切って話すことがです。補聴器をつけている場合、難聴の程度にもよりますが、普通の音量の声でも十分なことがほとんどです。

聞こえなくなった音を補う「補聴器」は早期装用がポイント

「日本補聴器工業会」の調査では、難聴に気づいてから補聴器を購入するまでに平均2~3年かかるそうです。また、半分程度の人は4年以上かかっているのも事実です。そして同調査では、補聴器所有者の内51%が「もっと早く補聴器を使用していればよかった」と思っている、という結果が出ています。何年もの間、難聴による不便を我慢しながら生活すると考えたら、とてももったいないことですね。

 補聴器が役立つと耳鼻咽喉科の先生に言われたら、まずはお試しで補聴器を使ってみてはいかがでしょうか。設備の整った販売店なら、聴力測定を行い、使用者の耳に合った調整をした上で補聴器を貸し出し、自宅など普段の環境で聞こえの改善を体感することができます。まずはご相談だけでもお気軽にお越しください。

早期装用が良いとされている理由

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