耳鳴りと難聴の関係。耳鳴りを克服するためのヒントは?

しつこい幻聴のような症状をもたらす耳鳴り。世界で約3億6千万人もの人が耳鳴りに悩まされているといわれています。この記事では耳鳴りのさまざまな原因を紹介し、耳鳴りを克服するためのヒントを説明します。

耳鳴りは、一過性ですぐに治まるケースが多くあります。しかし、慢性的に耳鳴りが続く場合、集中力が低下したり、眠れなくなるなど、日常生活に支障が現れることも少なくありません。

耳鳴りを経験したことがある人は、耳鳴りがいかに煩わしいかをご存じですね。仕事や友人との遊び、家族との生活など、人生のあらゆる面に影響を与えてしまいます。

できればなりたくない耳鳴り、どうして耳鳴りは起きるのでしょうか。

そもそも耳鳴りとは?

耳鳴りとは、存在しない音が聞こえてしまう症状です。その音には、純音性と非純音性の2種類があります。純音性の場合は、「ピー」、「キーン」、「ブー」といった、特定の高さ(周波数)の、単調な感じの音が聞こえます。ほぼ連続的に聞こえ続けるだけでなく、例えば「ピー」という音に重なって「キーン」という違う音が聞こえてきたりもします。

一方の非純音性は、「ブンブン」、「カチカチ」、「パチパチ」、「ガタガタ」など、純音性とは違う音がします。

また、耳鳴りといっても聞こえてくる音は高さや大きさもまちまちです。「ビー」という高い音、「シュー」という音、低いうなり声のような音が聞こえる人もいます。

耳鳴りの原因は?

なぜ耳鳴りになるのでしょうか。

その原因を1つに断定するのは難しいですが、耳鳴りになったきっかけや助長の要因は特定することができます。一般的に耳鳴りには、これらいくつかの原因があると言われています。

①加齢による聴力の低下
②大きな音を聞き続ける
③疲労やストレス
④慢性的な首こりや肩こり、歯ぎしりなど顎関節の機能障害
⑤耳や脳の病気(突発性難聴、メニエール病、脳腫瘍、脳梗塞等)

以下は耳鳴りの4つの種類と、それらに影響を与える要因です。

【自覚的な耳鳴り】

聴力の衰えなどが原因で、耳鳴りが発生することがあります。ある日を境に、耳鳴りを感じるようになりますが、この場合には耳鳴りは自分にしか聞こえません。一定の期間内で治まるものもありますが、症状が長引く場合もあります。

【他覚的な耳鳴り】
自覚的な耳鳴りと比べて稀なケースですが、患者さんに耳を近づけたり、聴診器を使ったりすると医師など第三者にも聞こえる耳鳴りが、他覚的な耳鳴りです。この音は一般的に拍動(ご自身の心臓の音が耳を通して伝わってくるもの)で、血流の異変や筋肉収縮が主な原因とされています。

【神経性耳鳴り】
メニエール病などの症状として耳鳴りが起きます。神経系が影響を受け、めまい、回転性めまい、ふらつきなどが伴います。

【体性耳鳴り】
身体の感覚信号が何かしらの理由で中断され、けいれんを引き起こすことで耳鳴りが起きます。

 難聴を伴う耳鳴り

耳鳴りにはいろいろなタイプがありますが、特に気を付けたいのは「難聴を伴うケース」です。

実は耳鳴りの患者10人のうち9人には、難聴の症状もあると言われています。難聴を伴わない「無難聴性耳鳴り」もありますが、「難聴を伴う耳鳴り」に比べて少ないのです。

「周囲の人の声や物音が聞こえにくくなったのは、耳鳴りのせい?」と思いがちですが、耳鳴りがあるから難聴になる、というわけではありません。「難聴が原因で耳鳴りが生じる」ことが多いのです。

難聴で耳鳴りが起こるメカニズムは次の通りです。

耳が悪くなることで音の情報が脳に届きにくくなります。すると脳は音をもっとよく聞き取ろうとして感度を上げます。その状態が続くうちに、脳が本来ないはずの音を自ら作り出してしまい、耳鳴りとなると考えられています。


実際、耳鳴りの音色は、難聴で聞こえなくなった音と似ているという特徴があります。例えば、高い周波数の音が聞こえなくなると、「キーン」や「シーン」といった高い音の耳鳴りが生じる場合が多くみられます。

耳鳴りを治す方法は?

一度耳鳴りになると、もう治す方法はないと思っていませんか?耳鳴りへの対処法についての研究は着実に進んでいますし、治療法も進歩しています。様々な治療法がありますので、個々の症状に合わせた治療も可能です。また、耳鳴りを完全になくすことは難しい場合でも、軽減する治療法があります。

耳鳴りの治療には大きく分けて、下記の2種類があります。

 ①耳鳴りの原因を治す治療

病気が原因で耳鳴りになっている場合、原因となる病気を治すことで、耳鳴りの改善も期待できます。

難聴による耳鳴りの場合は、原因となる難聴に対処すると、耳鳴りも軽くなったり消失したりします。加齢性難聴なら、補聴器で低下した聴力を補うことで、脳が音の感度を上げなくてもよくなり、耳鳴りが改善することもあります。

②耳鳴りによる苦痛や煩わしさを軽くする対症療法

耳鳴りは、ほかの音に紛れると、目立たず気にならなくなる傾向があります。音響療法(TRT)という治療法は、サウンドジェネレーターと呼ばれる器械や補聴器から、耳鳴りよりも小さな音を出し、その音を聞き続けるというものです。常に音がある環境にすることで、耳鳴りが気にならないようにするのです。

また、薬の内服による「薬物療法」やカウンセリングなどによる「心理治療」により、耳鳴りによる苦痛が軽くなることもあります。

 いずれにしても、耳鳴りを治療するためには耳鼻咽喉科を受診する必要があります。医師が診察し、原因を探り、治療法を決めます。

 耳鳴りは「年のせいで仕方ない」とか「治療してもよくならない」と思っている人が少なくありません。70%以上の方は耳鳴りがあっても受診に行っていないと言われています。でも放置していると、耳鳴りが慢性化したり、悪化したりするかもしれません。耳鳴りそのものがストレスとなり、仕事や家事に支障をきたし、体調をくずすこともあります。

耳鳴り克服のヒント

耳鳴りを克服するためには、治療だけではなく、前向きな姿勢でいることも大切です。耳鳴りでお悩みの方は、まずは耳鳴り治療に詳しい耳鼻科専門医を受診しましょう。

その上で、下記のヒントも参考にしてみてください。

●聴覚の再トレーニング
意識して周囲の音に耳を傾けてみましょう。お気に入りの音楽でも、梢に留まる鳥の声でも構いません。耳に入るさまざまな音はすべて、耳鳴りから意識を逸らしてくれます。

 ●よく眠るためのヒント
良い睡眠をとるのは、健康の基本ですね。日中に活動的であればあるほど、夜はよく眠れるものです。夜に紅茶やコーヒーを飲んだり、重い食事を取るのは避けましょう。また、アルコールなどに頼り過ぎると、質の良い睡眠は保証されません。就寝前にお風呂に入るのもよい方法です。どうしても眠りにつけない場合には、専門医に相談するのもいいでしょう。

 ●アクティブに過ごす
家族や友人との生活を楽しみましょう。そして、さまざまな活動を取り入れてプライベートライフを充実させてみてください。自分は幸せであると感じさせてくれるものや、生活の楽しみがあれば、耳鳴りに生活を支配されないようになります。

 ●静寂を避ける
休息は必要ですが、とても静かな環境にいると耳鳴りが気になってしまいます。リラックスできる音楽や環境音楽などを流すなど、ある程度音がある状態で体を休めましょう。

 ●身体の健康の促進
スポーツをすることで身体が健康的になりますが、これは耳鳴りにも良い影響を及ぼすと言われています。楽しくできるスポーツを見つけ、趣味として継続していきましょう。スポーツ中に耳鳴りが大きくなったように感じても、心配することはありません。

 ●リラックスをする方法を見つける
耳鳴りは緊張の原因となるため、リラックスする方法を学び、定期的に実行しましょう。自分に合ったリラックス方法を見つけてください。

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