難聴が引き起こす危険な転倒

難聴が原因で、日常の様々なシーンで危険性が高まることをご存じですか?今回はその一例として、難聴者が転倒しやすいという事実をお伝えします。どうして難聴になると転倒しやすくなるのでしょうか?そして転倒して頭を強く打つことで起こる外傷性脳損傷についてもお伝えします。

難聴は、音が聞こえにくくなること。聞こえにくいなら、少し我慢したり、話す人に大きな声を出すよう頼んだりすればいい?ちょっと不便だけど、何とかなる、そんな風に考えていませんか?

難聴は、「聞こえづらい」だけではないんです。難聴を放置することで、あなたに様々な危険が忍び寄ってくるのです。

難聴と転倒の関係

ジョンズ・ホプキンズ大学の研究では、軽度の難聴でも、健聴者に比べて転倒のリスクが3倍になる、という結果が出ています。また、難聴が進行すればするほど、転倒するリスクも高くなっていきます。

ではなぜ難聴になると転倒しやすくなるのでしょうか? それは自分の周囲の環境を認識しにくくなるためです。例えば、難聴になると他人が近づいてくる音が聞こえにくくなります。すると、急に近くに人がいる事に気づいてビックリし、転んでしまいます。また、近くに人がいることに気づかずに動いたら、人にぶつかってしまって転ぶこともあるでしょう。

「そばに人がいることに気づける音」というのは、靴音や服がすれる音など、小さな音が多いものです。それらの小さな音は、少し耳が悪くなるだけで聞こえなくなります。音がしっかりと聞こえていたら、人がいることに気づけて対処できることも、難聴だと対処できなくなるのです。

 また、難聴は脳に大きな負担をかけます。音が聞こえにくいと、脳は周囲の様子を知ろうとして常にフル回転します。音を聞くための負担が増えることで、バランスや歩行をつかさどる脳のリソースを減らす場合があります。特に高齢の難聴者の転倒リスクが高くなるのはこのためです。

高齢者の転倒事故 

そもそも、高齢者は転倒する危険性が高いのです。

高齢者の「不慮の事故」のうち、「転倒・転落」によるものは毎年多く発生しています。東京消防庁管内での救急搬送だけで、年間約6万人の高齢者が搬送されていて、そのうち約40%が入院が必要なケガを負っていたそうです。

出典:東京消防庁「救急搬送データからみる日常生活事故の実態(令和元年)」

 

 また、転倒・転落・墜落によって死亡する人は、実は交通事故で死亡する人の4倍以上もいます。「交通事故」による死亡者は年々減少しているのに対して、転倒などによる死者数は増えているのです。(出典:消費者庁「高齢者の事故を防ぐために」)

加齢とともに転倒しやすくなるのはなぜ?

なぜ年を取ると転倒しやすくなるのでしょうか?

高齢者が転倒しやすくなる要因は、主に以下の3つがあげられます。
●加齢による身体機能の低下・注意力の低下
●病気や薬の影響
●運動不足

特に加齢に伴い身体機能が徐々に低下すると、筋力、バランス能力、瞬発力、持久力、柔軟性が衰えます。すると、とっさの反射的防御動作が、素早く力強く行えなくなるといわれています。

 医学的に、私たちが体を平衡に保つためには、「目・耳・足」の連携プレーで発揮されるバランス感覚が重要だそうです。

●目から入ってくる情報
●重力や加速、回転などを感知する耳からの情報
●自分の体がどのように動いているかを感知する足の裏の感覚
この3つの情報を小脳が統合し、頭と目の動きを制御して、体のバランスをとっているのです。

耳の奥には、様々な複雑な器官が詰まっています。このうち「前庭」という部分にある細胞が減少すると、バランス能力が低下してくることが医学的に証明されています。加齢とともに発生する「耳の老化」は、聞こえづらくなる原因でもありますが、バランス感覚にも影響するのです。

 なお、転落・転倒事故と言えば、階段から落ちたなど、段差があるところで発生しやすいとなんとなく想像してしまいますが、実は段差がない平らな場所での事故が85%と、非常に多いのです。階段に手すりをつける等、バリアフリーの対策はもちろん大切ですが、バランス感覚を維持しつつ周囲への注意力を高めることが、転倒予防になるのではないかと推測できます。

高齢者が転倒した場合、「痛かった」だけではすまないことが多々あります。

転倒・転落は骨折や頭部外傷などの重大な傷害を招き、これが原因で介護が必要な状態になることもあります。厚生労働省「国民生活基礎調査」(令和元年)によると、高齢者の介護が必要となった原因は、多い順に「認知症」、「脳血管疾患(脳卒中)」、「高齢による衰弱」で、その次の4番目の理由として「骨折・転倒」(13.0%)が来ます。

 また、転倒によって脳がダメージを受けてしまう可能性もあります。

転倒によって外傷がなかった、あるいはすぐに異変が起こらなかったとしても、「外傷性脳損傷」が起きていることがあります。この外傷性脳損傷というのは厄介で、例えば転倒したり頭を打ったりしても、約90%の場合はその直後に意識を失わないそうです。ですので本人や周りの人は「大丈夫だ」と思っても、実は脳がダメージを負っていて、後で症状が出てくることがあるそうです。

補聴器の有用性

このように、転倒には大きな危険が伴います。転倒のリスクを少しでも下げるために、聞こえづらさを感じている場合は早めに対処するようにしましょう。

例えば補聴器を使うと、小さな音が聞こえるようになり、音の方向感覚も改善します。人やペットが近づいてくる音が聞こえますし、ぶつかったりつまずいたりして転倒することが減るでしょう。聞こえを改善することで、難聴によって起こる脳の過剰な負担も防くことができます。

 補聴器を使用するメリットは、注意力を高めるだけではありません。ワシントン大学医学部の研究によれば、補聴器を使用した時と使用していない時にバランスのテストをしたところ、補聴器を使用した時のほうがバランスを保てることが判明しました。

 この結果は、私たちは視覚によってバランスを保っているだけでなく、聴覚もバランスを保つために使用していることを示しています。

聞こえの向上で転倒の防止

補聴器を使用し、周囲に対する注意力を高め、バランスを保つようにすれば、転倒してしまうのを防ぐことができるだけではなく、外傷性脳損傷を起こすリスクも軽減します。そのためには、まず定期的に聴力検査を受けること、そして、適切な対策を取ることが大事です。

最近よく転ぶようになったと感じているなら、聞こえの状態についても疑ってください。 難聴がご自身(または身近な方)の転倒リスクを高めているのかもしれないと思ったら、耳鼻咽喉科の医師に相談することをお勧めします。

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